不透明な男
第10章 視線
何やってんだホテルマン、早く来い。
俺はもうルームサービスを持って来るであろうホテルマン頼りだった。
その間にも服のボタンは次々と外されベルトも引き抜かれていた。
「ほら、動かないで」
智「や、本当僕はそんな趣味は…」
「…仕方ないな」
引き抜いたベルトで俺の両手を縛る。
ギリッと手首が音を立てた。
智「え…、な、何」
「暴れるからだろう。大人しくしてりゃこんな事しなくて済んだのに…」
「……やだ、色っぽい」
腕を引き寄せて体を縮めようとした。
ガチッ
…なんだ?
あ、くっそ
お洒落すぎるんだよこのベッド…
お姫様が寝てそうなお洒落なベッドは綺麗な色の金属で出来ていた。
その柵に、手首を絞めたベルトは巻き付けられていた。
仕方ない
こうなりゃ蹴っ飛ばすしか…
俺の腕を固定した事によって二人が油断するのを待つ。
油断して俺から離れたその隙に、まずオネェを蹴り上げる。
そこから紳士も同じ様に蹴り飛ばせると最高だ。
智「く…」
「そんな力入れないで…」
「すぐに男の良さが分かるよ」
俺の胸を這う舌を少しでも離したくて身を捩らせる。
だが捩る程にオネェは深く覆い被さり、紳士は満足そうに俺を見ていた。
智「や、やめ…」
「その顔…、もっと歪ませたくなるな…」
「まあ、貴方って本当ドSね」
早く油断しろよ、なんの為にされるがままになってると思ってんだと、つい瞳に抗議の色が映る。
オネェが俺の下半身に下がり、今度は紳士が上半身を愛撫する。
オネェが俺の下着に手を掛け、下を晒されそうになった俺はギュッと目を瞑った。
コンコン
「なんだ?」
智「あ…、さっき、ルームサービスを…」
コンコン
「もお、いい所なのに」
仕方ないわねとオネェはドアに向かった。
やっと来たか…
おせえんだよバカめが
フッと空いた俺の足は自由になった途端、宙を舞った。
「ぐはっ」
紳士はスローモーションでベッドから浮き上がりそのまま俺の視界から消えた。
その時
「ぐふうっ」
ドアに向かった筈のオネェのオッサンみたいな声が聞こえた。