
不透明な男
第10章 視線
智「あの…、助けてくれたんですよね?」
A「そうだが」
智「だったらコレ…、外して貰えます?」
俺はガチャガチャと頭上のベルトを鳴らした。
B「こんないい条件が揃ってて、そうそう外すバカはいないよ」
智「え」
瞬間、ビクッと俺の身体が震えた。
智「んっ…」
Aは湿ったタオルから手をずらし、俺の胸の突起を摘まんでいた。
智「な、何を」
A「…敏感だな」
B「アイツらにもそんな顔見せたのか?」
智「そ、そんな訳無いでしょう」
眉を寄せて困った顔を見せた俺に欲情したのか、Aが覆い被さってきた。
智「だ、駄目ですよ?」
A「そんな格好で言われても説得力が無い」
智「好きでこんな格好してる訳じゃ…」
B「お前、自分の姿見た事あるのか?普段からヘンに色気があるってのにこんな…」
智「んん…っ、ず、狡いですよ…」
ずりぃよ
おれ動けないんだよ?
そこに二人掛かりは無いだろ…
とうとう本気を出して来やがった。
Aは俺の首に顔を埋め、胸の突起を執拗に弄ってくる。
智「ん…っ、く」
B「我慢しなくていいんだぞ?」
Bはというと、外されたファスナーから覗いていた俺の下着の上に手を覆い、その熱い掌を擦り付けている。
智「ほ、本当に、そんな趣味は無いんですっ…て」
B「そんなにモテるのに男を知らないのか?」
知らない訳じゃ無い。
だって松兄ぃとはそういう関係を持った。
だけどそれは松兄ぃだけだ。
男に欲情なんてしない。抱かれたいとも、ヤリたいとも思わない。
潤もニノも確かに可愛いが、可愛い過ぎるだけにそれは駄目だと自分に言い聞かせている。
ん?
言い聞かせている?
まあ、なんだ。良く分からないが、俺はホモではない。
だって家に箱の空いたゴムがあった。
俺が使っていたんだろう。
だが、それは女に使っていた筈だ。
だって男とヤッた記憶なんてこれっぽっちも無い。
忘れているだけ?
いや、そんな筈は無い。
俺は男に突っ込みたいなんて思わない。
だから相手は女の筈なんだ。
万が一潤が相手だったとして、それでも俺はきっと下だ。
ニノは、どうだろうな。
ニノなら俺は上でも、ってか上の方が…
ん?
おれ、今何を考えた?
いやいや、取り敢えず、俺はホモでは無いんだ。
