
不透明な男
第10章 視線
濃い…
濃すぎる…
悪夢のような濃い時間が過ぎた。
身体が鉛の様に重くなった俺は、倒れこんだベッドから起き上がれなかった。
あの二人はというと、チャチャッとシャワーを済ませとっとと出ていった。
仮眠はどうするのかと聞くと、俺達は任務に戻るからお前は少し休んでおけ、そう言い残してドヤ顔で去って行った。
体力を消耗した俺に気を使ったんだろう。
アイツらの仮眠の時間を俺にくれたんだ。
それでも時間は随分経ってしまったから、後30分位しか休めないが。
そんな事に気を使うくらいなら最初からやるなよな…
なんなんだアイツらは。本当に意味が分からないと、俺は溜め息を吐いた。
とりあえず、もっかいシャワーだな
ああ、めんどくさ…
身体をしっかり洗うと、洗面台の前に置いてある姿見にその身体を映す。
あんなに吸い付かれたのに、俺の身体はとても綺麗だった。
なんの痕も残っちゃいない。
あんな事しておいて…
こんな所に気を使うのか
それでも、手首だけは赤く痕が残っていた。
だが、まあこんなもの、何とでも言い訳が出来るなと、特に気にもしなかった。
只、気になったのは、服のシワ。
…なんだよこれ
ぐっちゃぐちゃじゃねえか
はああああ、頼むよマジでと頭を抱える。
その服を纏うと、やっぱりさっきの事は夢では無く、本当に起こった事なんだと思い知らされる。
これからどんな顔して会えばいいんだよ、なんて事してくれてんだバカ野郎がと悪態が止まらない。
そもそも3Pってなんだよ、おかしいだろ、ってかあれはレイプだ。
そうだ、あれは犯罪だ。
俺が女だったら今すぐ通報して務所にブチ込んでやる所だ。俺が優しくて良かったなお前ら、と悪態は尚も出てくる。
…てか、なんか変な事言ってたな
お前は気を付けろって
どういう事だ…?
あの最中に言われた言葉が、俺の頭に残っていた。
