
不透明な男
第11章 背徳
和「アナタ、昨日何してました?」
智「だから…仕事だよ。言ったでしょ」
昨日、豪華なホテルへ任務に就く為やって来た俺に、ニノから電話が入った。
成瀬領を気取っていた俺は、素の会話を聞かれちゃマズイなと、周りに誰も居ないのを確認してこそこそと電話に出たんだ。
プルル…プルル… ピッ
智『はい…』
和『あっ、大野さん?』
智『ん、どうしたの?』
どうしたのって何だよ、用がなきゃ掛けちゃいけないの?と声が少し拗ねた。
智『ふふ、そんな事言ってないよ。珍しいからどうしたのかと』
和『ん、ねえ。今日相葉さんの所いく?』
その日は泊まり込みの任務だったから、当たり前に答えた。
智『行かないよ』
和『ほんとに?』
智『ん、どうして?』
俺は今日は相葉さんの店には行けないんだ、いや、アナタが行くなら行くんだけど。と訳の分からない事を言う。
智『んん?どういう事?』
和『臨時のバイトを頼まれちゃったからさ、どうしようかなって』
智『やなの?』
和『いっつも会えないのにさ、俺が居ない時に限って来られたらやだなと思って』
だってアナタ、一回来たらなかなか来ないじゃん、だから、今日行くつもりならバイト断ろうかなって。と俺に相談をしてきた。
智『バイト行きなよ。俺も仕事だから』
和『そうなの?』
智『うん』
終わってから呑みに行かない?本当に大丈夫?と、念を押してくる。
智『ふふっ、大丈夫だよ』
だからお前もバイトに行けと、俺はニノに言ったんだ。
すると、ニノは安心した様な声を出して電話を切ったんだった。
智「ね?相葉ちゃん、おれ、昨日来なかったでしょ?」
雅「うん、来てないよ。ニノそんなの心配してたの?」
潤「もし来ても、相葉ちゃんが連絡くれるでしょ」
ニノは唇を少し尖らせてふぅっと息を吐くと、目だけを俺に向けて言った。
和「…もし連絡貰ったとしても行けなかったんだよ。夜勤だったから…」
潤「夜勤?」
へえ、ニノが夜勤なんて珍しいねと、相葉ちゃんは目を丸くしてニノを見ていた。
