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不透明な男

第11章 背徳


和「見たんだよ、俺」

雅「何を?」


昨日、臨時のアルバイトに出向いたと言っていたニノが、そのアルバイト中の出来事を話し始めた。


和「で、コレ持ってけって言われたから」

潤「うん、で、持ってったその部屋に?」

雅「その人が居たんだ?」

和「そう」


昨晩、仮眠を取ろうとしていた俺はベッドに張り付けられていた。
そこに、ホテルマンがルームサービスを持ってやって来たんだ。


和「上半身しか見えなかったけど、あれは…」

雅「う、うん」


相葉ちゃんがごきゅっと生唾を飲んだ。


和「そういう情事の最中だったと思うんだ」

潤「智にそっくりな奴が、男とそういう事を…?」

和「でも、合意の元と言うより…。だって、あの大野さんは両手を縛られてたんだよ」


俺は、ニノに見られていた。
潤んだ目を細めた状態では離れた所にいる男の顔なんて見えなかった。
だけどあのホテルマンは、ニノだったんだ。


智「おれの名前使うなよな…」

潤「そうだよ、そいつは智じゃねえ」

和「だけど、さっきの顔。全く同じだよ…?」

雅「で、でも、その大ちゃんは黒髪なんでしょ?」

和「そうだけど」

潤「ほら、だったら違うじゃん」


ね?違うよねと潤は俺に目で訴えてくる。


智「ふふ、おれじゃないでしょ…」


俺は少し困った様に笑うと、こっそり服の袖を伸ばした。
目敏いニノの事だ、手首の赤い跡が見つかれば、上手く誤魔化せそうに無い。


智「それに、おれはそんな事しないよ」

和「だけどさ、すんごい屈強そうな男達なんだよ。あんなのに組み敷かれちゃ抗えないよ」

雅「え、相手一人じゃないの?」

和「二人いたよ。ガッチリ系のが」

潤「…智の事じゃ無いにしても、ムカつくなソイツら」

雅「なんで止めなかったのさ~」


俺と同じ顔をした男が屈強な男に襲われていたと聞いて、何故か皆が怒り出した。


和「俺だって何か言ってやろうと思ったよ。だけどさ…、あの大野さんの首に吸い付いてる奴のオーラが半端無くてさ…」

潤「ビビったんだ」

和「わ、悪いかよ!あんな男見たら誰だってビビるわ!」

雅「まあ、何もしなくて良かったよ。一緒に襲われるのがオチだからね」



その通りだ。

ビビってくれて良かった。

お前まで巻き込まれなくて済んだだけでも、良かったんだ。




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