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不透明な男

第11章 背徳


ねえ、違うんだよね?あれは、本当に大野さんじゃないんだよね?とニノがしつこい位に聞いてくる。


智「もう…。おれは何もされてないんだから、そんな顔するなって」

雅「ニノは大ちゃんの事になると異常なまでに心配するんだから」

和「だって」


唇を尖らせて拗ねる。
そんなニノがとても可愛くて、嘘を付いている事に胸が傷んで、俺の自己嫌悪はどんどん深まった。


潤「ほら、ニノが信じないから智が」


潤が俺をチラッと見る。


和「あ…、ごめんね大野さん。ヘンな事言って」


俺は随分情けない顔をしていたんだろう。
拗ねて小さくなっていたニノまでもが俺の心配をし出した。


智「ううん。いいよ。…ね、ニノ、笑って?」

和「え?」

智「今日ずっとヘンな顔してんじゃん。笑顔、見せてよ」

和「…ふふっ」


やっと笑ったな、やっぱ可愛いなとニノを囲む様に皆で笑顔を見た。


雅「ささっ、気を取り直して、かんぱーい」


相葉ちゃんの号令に合わせて俺達はグラスを鳴らした。





雅「そろそろぉ、へいてん、ですよおぉぉ」

智「んふふふ、誰に言ってんのぉ?もう、おれたちしか、いないじゃん…っ、ぷぷ」

潤「んぁ?いつの間に…ふ、ふふっ」

和「んんん…もう、うるしゃいなあ…。むにゃ」


カウンターに身を預け、ごろごろと転がる。


雅「俺はぁ、後片付けが、あるからぁ。そっちは勝手にお帰り下さい…。むにゃむにゃ」

智「ええ?寝てんのか起きてんのかわかんねえ…。ふふっ」

潤「タクシー…。へいっ、タクシー!」

智「ここじゃ捕まんないでしょ…」

和「う、うるしゃい…」


俺が一番しっかりしてる。
そう核心した俺は、皆の分のタクシーを呼んだ。


それぞれタクシーに押し込むと、住所のメモを運転手に渡す。


智「相葉ちゃんも帰りなよ。明日早めに来て片付けた方がいいよ」

雅「うん、そうする…。タクシー、ありがとぉ、大ちゃん♪」



最後にむぎゅっとバグをして相葉ちゃんはタクシーに乗り込んだ。


智「じゃあね?気を付けて」

雅「あ、大ちゃん」


ドアから離れようとした俺を相葉ちゃんの手が引き止めた。


雅「その手首、どうしたの…?」

智「え…」



目を丸くして固まった俺に、じゃあねと笑顔を残して相葉ちゃんを乗せたタクシーは去って行った。




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