
不透明な男
第11章 背徳
俺は今日、すこぶる不機嫌だ。
この間、相葉ちゃんが帰り際に残した言葉。
あれが気になっていた。
ニノや潤は目敏くて、少しの変化にもすぐに気付く。
いわゆる勘が鋭いタイプだ。
それに比べて相葉ちゃんは、鈍感というか、なんと言うか。
あまり鋭さは見られない。
だから俺も気付かないうちに油断していたのだろう。
だけど、あの言葉。
ひょっとして、気付かれた…?
いやいや、相葉ちゃんに限ってまさかね、と頭に浮かんだ考えを否定する。
それに翔も…
どういう事だアイツ。
なんだって知らない振りして俺に近付いて来たんだ。
いや、勝手に翔の病院に運ばれたのは俺だけども。
だけども。
どんな魂胆があるんだ…と。
必死で考えを纏めようとしているのに、うるさいんだ。
智「ちょっと黙って貰えます…?」
B「そう睨むなって。そんな顔しても可愛いんだから」
A「今日はまたエライご機嫌ななめだな」
デカイくせにちょろちょろと俺の周りを彷徨く。
こんなんじゃなんの考えも纏まりゃしないと、俺は溜め息を吐きまくっていた。
と、思ったら急に静かになった。
なんだ?と俺は二人に目をやると、二人は他のBGと何やら話していた。
A「…て事だ。分かったか」
B「俺たちが見張ってるからな。下手な真似すんじゃねえぞ」
ああ。またか。
あの二人は煩いけど、なかなか俺の心配をしてくれていた。
ここで俺がヘンにBG達に絡まれないのは、あの二人のお陰でもあった。
俺にちょっかいを出して来ようとする奴を、こうやって制してくれている。
だから俺はいつも、この二人と一緒に任務に就かされるんだ。
離れてると目が届かないから、と。
優しいんだかなんなんだか…
有り難いっちゃ有り難いけど、ちょっとズレてるんだよなと、この光景を見るといつも苦笑いをしてしまうんだ。
ああ、そうだ。
ちょっとじゃねえや
この手首、どうしてくれんだ
相葉ちゃんが見付けた痕は、コイツらのせいだったと、俺はまた不機嫌になった。
