
不透明な男
第12章 惑乱
雅「ねえ、やっぱ今日おかしいよ。どうかした?」
やっと笑ったと思ったのに、と相葉ちゃんは心配そうな顔を見せた。
和「うん。いつもよりひどい」
潤「ね」
酷いって何がだ。
和「いつにも増してボケ倒してる」
潤「言っとくけどそれ、食えないからね?」
智「あ、ブドウじゃねえのか」
潤「どうやったら間違えんだよ…」
フルーツの盛られた皿に、硝子のオブジェも飾られていた。
その派手なショッキングピンクの塊を、俺は葡萄だと思ってずっとフォークでつついていたんだ。
和「葡萄はコッチ」
智「ん…」
潤「美味しい?」
智「うん」
和「そりゃそうだよ。硝子じゃないもん」
チラッと皆を見上げると、三人ともじっと俺を見ていた。
それはそれは困ったような、情けないような、なんとも言えない顔をしていた。
智「そっちのがヘンな顔してるよ…?」
和「は?」
誰のせいでこんな顔してると思ってんだ、イケメンが台無しだよと口々に文句を浴びせられる。
智「ごめんってば。ちょっとボケてただけだよ」
潤「それにしたって」
和「なんか、あったんでしょ?」
なんなんだよコイツは。鋭すぎて困る。
雅「えっなに、何があったの?」
智「いや、なんもないって」
潤「…ほんと?」
目力強いんだからよせ。そんな見られると焦るわ。
智「んもー、人の心配ばっかしてる場合じゃないよ」
和「だってさ」
智「お前の事言ってんだよ?気付いてるの?」
和「…なにを?」
やっぱ気付いてないのかよ。気を付けろって言っただろうが。
智「ほら、あれ」
雅「え…?」
智「こら、あんまジロジロ見ないで」
雅「あ、うん」
潤「…あいつらが、なに?」
智「ずっと狙ってるよ。ニノの事」
和「え」
見た目は爽やかそうなのに、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを漏らす二人組の男がいた。
そいつらに狙われてる事を、ニノは気付いていなかった。
智「…結構前からだよ?」
雅「えっ」
智「気になるだけかと思って様子見てたんだけどさ」
潤「うん」
智「最近ちょっとヤバそうなんだよね…」
和「嘘でしょ」
いやいやそんなバカなと笑っていたニノが漸く青ざめた。
そうだよ青ざめる位がちょうどいい。
俺ばっか見てないで、周りをちゃんと見ろ。
