不透明な男
第2章 正体不明の男
俺を見ろ、俺を思い出せ、と男は俺を揺さぶる。
あそこで出会ったじゃないか、あんな話をしてお前は楽しそうに笑っていたじゃないかと、涙の滲む目で訴える。
どうして忘れるんだと泣き叫ぶ男の前で、俺は頭を抱えた。
そうだ…
思い出そうとしたんだ…
泣く男があまりにかわいそうでおれは、
この男を思い出そうと頭の中を必死で探したんだ…
男『思い出せ…思い出せよ!』
男は俺の寝間着を剥ぎ取る。
男『俺がどんなにお前を大事に思っていたか証拠を見せてやるよ!』
俺の頭を掴むと唇を押し付けてくる。
頭が激しく痛む。
頭の中で重い鐘をガンガンと鳴らされているようで周りの音が遮断される。
俺の意識は遠退いていった。