不透明な男
第2章 正体不明の男
病室で目を覚ましてから意識を失うまでの事は思い出した。
智「そんで、意識の無いおれを襲ったの?鬼畜だよね。」
男「おま、鬼畜って」
智「だってそうじゃん。」
俺は今頃になって怒りが込み上げてきた。
智「だっておれ、気絶してんだよ?普通心配するよね?」
男「う…」
智「なのに意識が無いのをいいことにさ…」
男「そ、それは…」
冷静で大人の雰囲気を纏っていた男が焦っている。
俺はニヤリとほくそ笑む。
智「常識人だったらお医者さん呼ぶでしょ。」
男「や、だから」
智「あんなのレイプと一緒だよ。」
男「おま!人聞きが悪いぞ!」
智「サイテー」
俺は冷たい目で男を見てやった。
男「お前…、いや、よかった。」
智「はい…?」
男はなぜかほっとしたような笑顔で俺を見る。
男「記憶を忘れたとは言ってもやっぱりお前だよ。…まあ、少々Sっ気が強くなってる気もするが。」
智「はあ?」
そうなの?と不思議がる俺に、男は頷く。
智「おれってどんな奴だったの?」
男「そうだな…、ひとことで言えば、可愛い奴だよ。」
智「なんだそれ。」
男「や、不思議なんだよ。お前は。」
男は俺に受けた印象を話して聞かせる。
初めて俺を見た時、俺に見とれて目が離せなかった事。
勇気を出して話し掛けた時、俺のふんわり纏った雰囲気に魅了された事。
男の口から出てくるのは、聞いている俺が恥ずかしくなるような事ばかりだった。
男「暖かくてふんわりとしたオーラを纏っているのに」
男はそこまで言うと、少し寂しそうな表情を見せる。
男「どこか儚げで、すぐにでも消えてしまいそうだった。」
それが現実になったんじゃないかと、男は焦ったんだ。