
不透明な男
第12章 惑乱
智「貴女は…」
「宜しくね、領くん」
俺は豪華なホテルに来ていた。
どこぞの大富豪がパーティーを開くからと、社長のBGとして来ている筈だった。
「貴方敏感なのね。私の視線に気付いてたでしょ?」
生温い視線を感じていた。
どうした?と聞く社長に、なにか視線を感じるんだと少し怖がる振りをして答えた。
「貴方の社長は物分かりがいいわね」
社長は、お前は私の為なら何でもすると言ったね?と俺に確認を取ってきた。
勿論だと食いかかる様に答える俺に、じゃあ何も言わずにこの部屋に行けと、ルームキーを渡された。
俺は社長が来るのだと思っていた。
思いがけず早く来てしまった展開に、俺は焦りながら只じっと待っていた。
そのドアがノックされたと思ったら、入ってきたのは富豪の夫人だった。
智「え…、何故、夫人がここに?」
「あら、聞いてないの?社長も意地悪ね」
ウチの会社と大事な取引があるのだけれど、交渉が上手く行ってないんだと、領くんを好きにさせてくれたら、私が口を聞いてあげてもいいのだけれどと、社長にそう言ったらしい。
「二時間、貴方を私のモノにしてもいいらしいわよ?」
俺は取引の材料にされたんだ。
全く、どこまでゲスい男だ。
智「好きに、とは、どういう…?」
「ふふ、子供じゃないんだから。分かるわよね?」
シャワーを浴びてくるから待ってて、貴方はそのままでいいのよ?貴方の匂いを嗅ぎたいのと、少し変態気質を伺わせながら夫人はシャワールームに消えていった。
まいったな…
おれがリードしなくちゃなんねえのかな
はぁ、と溜め息を吐きながら豪華な部屋を見渡す。
まあ、社長じゃなかっただけでも良かったのかと、気持ちを切り替えようと深呼吸した。
その時、俺の視界に何やら気になるモノが目に入る。
…なんだ、アレ
監視カメラだった。
その小さな監視カメラは、隠れる様に部屋の至るところに取り付けられてあった。
そんな趣味もあったのかよ
パワーアップしてんじゃねえか…
