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不透明な男

第2章 正体不明の男


俺は話題を変えようと質問を再開する。


智「そんで、おれはどこの誰なの?」

男「ん?んー…知らない。」

智「はっ?」

男「や、だからお前は謎なんだって。」


あんな事をしておきながら、男は俺の事をあまり知らないと言う。



コイツが俺の事わかんないんだったら
誰が俺の事わかるんだよ…

友達とか思い出せねーぞ…



男「俺が知ってるのは、俺と一緒にいる時のお前だけだ。その他は知らないよ。」

智「えぇ…そんなのアリなの?」


俺はため息をつく。


男「そのセリフ、まんまお前に返すわ。」


男は少し呆れた声を出す。


男「俺に何も教えてくれなかったのはお前だよ。」


男は、ひと目で俺に興味を持つ。
俺の事を知りたくて、俺を見かけた場所に何度も足を運んだ。
そして再び俺を見かける。
それがチャンスだと言わんばかりに俺に話し掛ける。

この間もいらっしゃいましたよね?なんて世間話から入る。
突然の事なのに、まるで話し掛けられる事がわかっていたかのように俺はふんわりと微笑み挨拶を返したらしい。

それからも何度か偶然を装って男は俺に出会う。

しばらくすると敬語も使わなくなり、友達のように肩を組みながら笑い合う。

もうそろそろいい頃合いかと、俺という人間の事を聞き出そうとする。
しかし俺は、はぐらかすばかりで簡単な事位しか自分の事を話さなかったらしい。



男は俺の正体を知らないまま、俺に溺れた。











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