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不透明な男

第12章 惑乱



冗談はやめて下さいよと、笑いながらなんとか交わした。
脈が早いのも誤魔化せた筈だ。

だがヤバい。

そろそろ本気でヤバいかもしれない。






B「おい、大丈夫か」

智「ん…、ちょっと、ごめん」


持ち場に戻る前に、青くなった顔を戻そうとトイレに向かっていた。
その通路でBに出会した。


B「そんなとこじゃ休めねえだろ」


こっちで休めと仮眠室に連れて行かれる。


智「大丈夫だから」

B「嘘付け」


ふらふらとした足取りをBに支えられる。
仮眠室に入ると、大丈夫なんて言葉とは裏腹にベッドにダイブした。


智「ごめん、ちょっと休んだらすぐ戻るから…」

B「気にするな」


アイツには言っとくから、しっかり休めと部屋を出て行こうとする。


智「あ、ちょっと…」

B「ん?」


目でBを呼びつけた。


B「どうした?何か飲み物でも買ってきてやろうか?」

智「や、それは、いい」


ベッドに横たわる俺に、Bはぐぐっと体を曲げて近付いていた。
俺はそのBの胸元を掴んで引き寄せる。


B「お…」


ぎゅっと、近付いた大きな体にしがみついた。


智「ごめん、ちょっとでいいからこうしてて…」

B「ん…」

智「なんか、震えちゃって(笑)」

B「分かってるよ…」


ベッドについた手を、俺の身体に回す。
そのままぎゅっと抱き締めてくれる。


智「ごめんね」

B「謝るな。何も迷惑なんて掛かってねえ」


Aは少し松兄ぃに似ていると思った。
だけどBもなかなか男前な台詞を吐く。


智「ふふ…っ」

B「なんだ?」

智「や、バカなのに格好いい台詞言えるんだと思って」


なんだと?と怒ったふりをしながらも、笑った俺の顔を見て優しい顔をする。

その顔を見て、俺の胸はまたチクッとした。


智「なんでそんな顔するの… おれの事、憎くないの?」

B「なんで憎いんだよ?」

智「だっておれのせいで…っ」


言葉の途中で唇を塞がれる。


B「まだ、そんな事、言ってんのかよ…」

智「ん…っ、だ、って、恨むのが、普通…」


罪も無いのに恨むバカが何処にいるんだと、唇を塞ぎながら言う。


B「ほら、泣いてんじゃねえか…」



そんな事を言うコイツだって泣きそうな顔をしている。



辛そうな顔で、俺の口内を熱くするんだ。




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