
不透明な男
第13章 胸裏
あと1週間だ。
あと1週間で終わる。
智「潤」
男前な顔に不安さを滲ませてキョロキョロと辺りを見回す。
その潤に声をかけた。
潤「あっ、智!」
俺を見つけると、顔がパッと輝く。
なんとも言えない嬉しそうな表情で、俺に向かって手を振るんだ。
潤「こっちこっち!」
智「うん、ふふっ、久しぶり」
手をぶんぶん振る潤が無邪気で、俺はつい笑ってしまう。
その俺の様子に、潤もクスッと笑う。
潤「ふふっ、なんだよ。何が可笑しいの?」
智「や、別に?」
クスクスと笑いながら店に入る。
ここ美味しいんだよと言う潤に続いて、俺も席についた。
潤「急にごめんね?」
智「大丈夫だよ。おれも丁度…」
お前と話がしたかったんだと、言おうとして口をつぐんだ。
潤「え、何?」
智「いや、別に。それより話って?」
運ばれてきた料理に手を付けながら、潤は少し言いにくそうに話し出す。
潤「ああ、うん…」
智「なんだよ。お前が話があるって呼んだんでしょ(笑)」
潤「ふふっ、うん。その、俺ね…」
フォークで人参を突き刺し、それを見つめながら潤は話す。
潤「ちょっと、試してみようと思って」
智「ん?何を?」
潤「あ~、俺、さ。役者目指してるの、知ってるよね…?」
智「ああ…、うん。知ってるよ」
知ってるよと、俺が言うのを待っていただろう潤は、その言葉を聞くと呆れた様に笑いながら話を続けた。
潤「ふふっ、やっぱ知ってたんだ。ったく…」
智「なんだよ(笑)」
潤「いや、で。それでね?」
智「うん?」
やっぱ目指すなら世界だろう、俺はハリウッドに行くと、さすが潤だなと思える言葉を発した。
智「おお、マジか」
潤「うん。実はさ、もうオーディション受けてさ。小さい役だけど貰ったんだ」
智「えっ、凄いじゃん!」
潤「へへっ、ま、エキストラみたいなモンだけど」
夢を話す潤はキラキラと輝いている。
凄く眩しくて綺麗で、とても格好いいんだ。
潤「でね?そのままアッチで試そうと思ってるんだよね」
俺が心配なんてしなくても、潤は前に進んでいた。
確かな目標を持って、夢に向かって走っていたんだ。
智「いいね。やっぱ潤だよ」
潤「なんだよそれ(笑)」
忘れてたけど、潤は強いんだった。
