
不透明な男
第3章 自覚の無い男
智「おれ、どこが悪いの?」
医「あ、えとそれは」
智「何か悪い病気なの?」
医「と、いいますか、え~と」
智「大丈夫だから。ハッキリ言って。」
医「あのですね、大野さん。あなたは…」
俺は歯をグッと食い縛る。
医「あなたは…どこも、悪くないんですよ。」
俺は目をぱちくりする。
智「へ?」
医「や、だからですね、その~」
智「え?え?」
医「こちらとしましてもその~、色々と検査をしてみたのですが…」
智「うん」
医「どこも、悪くないんですよ…」
智「え?どこも?」
医「ええ、全く」
俺は呆然とする。
何かの病気であれば、治療次第でなんとかなるのだろうと思っていた。
しかし検査をしても悪い所は見当たらず、どうしてこうなったのかサッパリ分からないと言う。
とにかく、貴方はすこぶる元気だと医師は告げた。
智「は…、おまえ医者だろ!」
医「いや、あの…」
智「わかんないってなんだよ!この藪が!」
医「あの、これ…」
医師は自分の胸元に付いた札をつまんで俺に見せた。
研修医…
櫻井、翔…
智「は?研修医?おまえ医者じゃねえのかよ!」
翔「な…医者のヒヨコです!」
櫻井翔という研修医は顔を真っ赤にしてふんぞり返った。
