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不透明な男

第13章 胸裏




智「ん……」

潤「智…」


なんだかんだで結局キスをしている。

あんな拗ねられちゃ断れる筈も無いだろ。

潤はそれを分かって拗ねるんだ。


潤「甘いね…」

智「んぅ…、?」

潤「甘いよ、智の唇」

智「ふふっ、潤も…、甘い」


いつもより少し長めにキスをする。
きっとこれが最後なんだと、潤は分かってるから。

なかなか離れない潤に、いつも俺がストップをかける。

だけど今日はまだかけない。
これが最後だと、俺も分かってるから。


潤「智のキス、気持ちいいね…」

智「ん、おれも、気持ちいいよ」


何を言ってんだか。
こんな気持ちの悪い台詞が俺の口から出るなんて。


智「ふ、ぁ…」

潤「んん、智…」


ってかもう駄目。
これ以上は耐えらんない。


智「ん、潤、も、終わり」

潤「ん…」


今日はゴネる事無く素直に離れた。

俺の濡れた唇に、潤は親指を這わせながら話す。


潤「いっつもいいトコで止めるんだから…」


あ?やっぱゴネるのか?


潤「今日も帰っちゃうの?」

智「ん、そろそろ帰る」

潤「最後なのに?」

智「も~、お前ね…」


だからそんな拗ねた顔をするんじゃない。
なんで俺の気持ちが分からないんだ。


智「そんな顔するからだよ」

潤「え?」


もういいか。言っちゃっても。


智「俺がなんでいつも泊まらなかったか、分かる?」

潤「俺に襲われると思ってたからでしょ?」


本当真面目な奴だな。
そんな話、信じてたのかよ。


智「違うよ。お前はそんな事しないでしょ」

潤「じゃあどうして」


キョトンとする潤に、ふふっと笑いながら俺は言う。


智「おれだよ。おれが、潤に甘えちゃいそうだから」

潤「…え?」


眉を上げてポカンとする。
そんな潤は、素直さが滲み出てる。


智「ふふっ、まだ分かんないの?お前があんまり可愛いからさ、抑えるの、大変だったんだぞ?」

潤「えっ、ほ、本当に?」

智「そうだよ。なのにお前キスしたいとか言うから(笑)」


もう本当参るよ、なんて苦笑いをしながら俺は話した。

だって、俺が甘えたら、お前は必ず受け止めてしまっただろう。

だけどそれは駄目だったんだ。

お前が俺を大事に思ってくれてるのが分かってたから。



だから俺は、お前のせいにして帰ったんだ。




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