
不透明な男
第13章 胸裏
いよいよあと数日だ。
その日を社長は待ちきれないのか、毎日の様に俺を社長室に呼んだ。
瞳をギラつかせ、俺を見てニヤニヤと笑う。
その気持ちの悪い笑みに、俺は毎日肝を冷やしていた。
そんな時は気分転換だ。
久し振りにアイツの顔が見たい。
和「珍しいね。大野さんから誘ってくるなんて」
智「そう?」
和「そうだよ。アナタから連絡くれた事なんて無いじゃない」
まあ別にいいんだけどね、今はこうして二人で呑めてるんだし、と無邪気な笑顔を俺に見せる。
智「悪いね、自分勝手に呼びつけちゃって…」
和「ほんとだよ。俺は都合のいい男じゃないんだからね?」
貴方から連絡があれば来るに決まってるでしょう?それを知ってて呼ぶんだからタチが悪いと責められた。
智「ふふっ、ごめん」
和「本当にもう…」
口では悪態をついても、顔はニコニコと笑っている。
例え俺がどんなに酷い奴だったとしても、コイツは怒らないかもしれないな。
智「そんな無邪気に笑うなよな」
和「え?」
そんな可愛い顔を見せるなってんだ。
まあ俺が見たかったんだけど。
名残惜しくなっちゃうだろうが。
和「…どしたの? なんか、あった…?」
ほらね、勘が鋭いんだよな。
だから困るんだ。
智「別になんもないけど」
和「だって、急に連絡くれるとかさ。なんかおかしくない?」
智「おかしくないよ(笑) おれだって、たまにはお前と呑みたいな~とか思う事位あんだよ?」
和「ええっ」
ニノは驚いた様子で少し顔を赤くした。
俺そんなに素っ気無かったか?
そうでも無いと思うんだけどな。
智「なんでそんな驚くんだよ。結構思ってたよ?」
和「ほ、ほんとに?」
智「うん」
乙女か。
モジモジしやがってちきしょう。
元々可愛いんだからそんな仕草をするんじゃない。
そんな照れた顔を見せられちゃ、話が進まないだろうが。
