
不透明な男
第13章 胸裏
智「今日はどこにあるの?」
和「ん~」
案の定酔い潰れてしまった。
俯いてニコニコしながらも何も話さない。
そのままクピクピと酒を飲み続けるニノを止めようかと思ったけど、なんだか止められなかった。
智「またここか」
ケツのポケットに手を突っ込む。
和「はずれ~」
智「あれ?」
やっぱり玄関の前でモタモタしてるんだ。
智「ん~、じゃあこっちか?」
和「うひゃひゃっ、く、くすぐったいよ」
智「我慢しなさい」
胸の内ポケットをまさぐると、何やら硬いものに手が触れる。
智「ん、これだな」
和「や…、だからそれ違」
智「ふふっ」
いつもの様にふざけながら鍵を探し当てる。
こうしてふざけてると、さっきのニノの少し寂しそうな笑顔が消えてくれるかと思ったんだ。
智「はいニノちゃん。靴脱いで」
和「ん」
甘えん坊のニノは、俺に凭れて身を委ねている。
こんなにも他人を信用出来るのかと言う位に、完全に安心しきっているんだ。
智「ちゃんと歩いて。もうすぐソファーだから」
和「んん」
本当にコイツは可愛いな。
まるで子供みたいだ。
智「水、飲んだ方がいいね」
和「ん。飲む」
コロンとソファーに転がって、俺が水を持ってくるのを待ってる。
これは二日酔いコースだなと、引き出しから薬を取り出しそれも持っていく。
智「薬も飲んだ方がいいよ」
差し出したグラスを受け取らずに、俺をチロッと上目遣いで見上げる。
智「…甘えたって駄目だぞ?」
和「ちっ、なんだよ~」
おいこら、今舌打ちしなかったか?
智「っとにも~、仕方ない奴だな…」
和「ん」
唇を付き出すニノの顎を掴むと、クイッと指で持ち上げた。
すると、ニノの目は細くなって俺の口元を見る。
智「いくよ?」
和「うん」
顎を掴んだ手をずらし、ニノの頬をむにっと潰す。
かぱっと開いた口にすかさず薬を放り込むと、グラスをニノの唇に押し付けた。
和「んぐ、けほけほっ」
智「はい、おりこうさん」
むせるニノの背を擦る。
結構な罪悪感を抱きながら、ニノの横顔をチラッと見た。
胸が少しきゅっとする。
俺は、コイツの寂しそうな顔を見たくないみたいだ。
