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不透明な男

第13章 胸裏




ニノの温もりを抱いて寝た。

ほわほわして、なんだか心が解れた。

その翌日、俺はまた不安定になる。


相葉ちゃんの笑顔を見て癒されて、潤の強さに勇気を貰って、ニノの温もりに解された。

なのにこの心臓。

何故こんなにも締め付けるのか。

来る日の不安感からなのか、それとも…

あ、そうだ。

松兄ぃに会わなきゃ。

忘れてた訳じゃ無い。
どんな顔して会おうかと悩んでいたんだ。

だけどもう悩まなくて良さそうだ。

良いとこ見ちゃったからね。





兄「おう、久し振りだな」

智「ん」


やっぱ目の前にすると表情に困るな。
俺を激しく抱く男が、爽やかな笑顔で俺を見るんだ。
そりゃ少しはあのシーンが脳裏をよぎるってモンだろう。


兄「珍しいな、お前から誘ってくるなんて。何かあったのか…?」

智「そうじゃないよ。只、久し振りに会いたくなっただけだよ」


たまに連絡するとコレだ。
何かと心配そうな顔を見せる。


智「松兄ぃの近況も聞きたかったし、ね」

兄「近況?」


あ、とぼけたな。
俺は知ってるんだぞ。


智「あの女の人、誰なの」

兄「お、女?」

智「ちゅーしてたじゃん」

兄「ぶほっ」


おま、急に何を言うんだと松兄ぃは酒を吹き出した。


智「おれと言うものがありながら…」

兄「えっ」

智「あんなに激しくおれを抱いておきながら」

兄「う」

智「もう心変わりしちゃったの?」

兄「さ、智」


俯いた顔から瞳だけをチロッと松兄ぃに向け、じっと見つめる。
松兄ぃは明らかに狼狽えた。


兄「智、ちょっと待て、話を…」

智「ぷ、ぷぷ…っ」

兄「さ、智?」


狼狽える松兄ぃって新鮮だな。
もの凄く困ってるじゃんか。


智「ぷぷっ、ま、松兄ぃでも、狼狽えたりするんだ」

兄「あ…?」


げ、怒った。
めっちゃ青筋立ってる。


兄「お前、ひょっとして俺をからかったのか…?」

智「い、いやあの」

兄「覚悟は出来てるんだろうな?」

智「ま、松兄ぃ、ひょっとして酔ってる?」


明らかに顎クイをされている。
しかも完全に目が据わっているじゃないか。


なんで急に酔ったんだ。


松兄ぃはなんでも見透かすから怖いんだ。



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