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不透明な男

第14章 終幕



智「翔くん、やめ…」


俺の紅い跡を冷たい指先がなぞる。

その指の感触に、俺の身体はゾクゾクと震えるんだ。


智「っ、は、はぁ」


身体は更に熱を持ち、額に乗せているタオルは既にぬるくなっている。
火照らせた身体を震わせ、俺は翔の手を掴んだ。


智「だ、駄目だよ、触らないで」

翔「こんなに熱いのに…。辛いんでしょう?」


俺を見る翔の瞳は揺れていた。
眉をしかませ、心配そうな表情を浮かばせる。
そこから覗く瞳は、辛そうに揺れていたんだ。


智「っだ、大丈夫だから」

翔「大野さん…」


その瞳を凝視出来なくて、やっぱり俺は顔を背けた。
横を向いて目を伏せる。
その俺の伸びた首筋に、温かいものが触れた。


智「…っ、ん」


途端、身体がビクッと震える。
その温かい刺激に目を開けていられずに、俺はぎゅっと目を閉じる。


智「っは、ぁ…っ、や、やだよ、触んな…っ」


俺の首筋に唇を這わせる翔の頭を押さえる。
その手に力を込め、翔の頭を押し返そうと思った。
だけど震える手には力なんて入らずに、逆に手首を掴まれる。


翔「大野さん、これ…」


その手首にくっきりとついた赤黒い痣を翔は見付けた。
その痣を、翔の親指は優しく撫でる。


翔「…痛かったでしょう?」

智「…ぁ、っ」


その手首に翔の舌が這う。
ゆっくりと舐めたかと思ったら、唇で包む様に吸い付き、湿った音を立てる。

俺の身体はずっと熱を持ったままなんだ。

社長のマンションにいた時からずっと。

このホテルに逃げて来ても、俺の熱は覚めなかった。
何度もイク寸前で止められた身体は、疼くなんてものじゃ無かった。
執拗に攻められ、ギリギリの所で耐えさせられる。

次に手を差し伸べられたら、思わずすがってしまう様にと、俺の身体をコントロールしたんだ。



そんな状況の俺の身体を知ってか知らずか、やめてと言っても翔は俺から唇を離さなかった。






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