不透明な男
第14章 終幕
翔「そんなに、僕に触れられるのが嫌ですか…?」
翔の舌を俺の口内に含みながら、俺は否定の言葉を言った。
それを聞いた翔は、静かに俺から出て行き悲しそうな声を俺に聞かせる。
その声に揺さぶられちゃいけない。
智「嫌、だよ」
手首を掴まれたままの俺は、顔を背けて話す。
智「さっき、見てたでしょ?」
翔は窓に貼り付いていた。
その貼り付いた窓から、俺の姿を見ていたんだ。
智「おれが何してたか分かるよね?」
翔「あれは…、貴方の意思じゃ無いでしょう?」
哀れみを含んだ瞳で俺を見ている。
翔の顔を見なくても分かる。
その強い視線は、翔の表情までも読み取れるんだ。
智「…おれの意思だよ。おれが、やった事だ」
翔「大野さん…」
その瞳は、俺の汚い身体を捕らえるんだ。
智「そんな目で見んなよ…っ」
俺は翔の腕を振りほどくと、毛布を被って顔を隠す。
小さくまるまった身体を震わせ、翔に背を向けた。
智「…っ」
固く閉じた身体に翔が触れる。
ひっくり返された俺は、すぐに腕を掴まれ再び唇を覆われた。
智「っん、翔…っ」
翔「僕がしている事は、さっきの男達と同じですか…?」
やっぱり俺は震えるんだ。
間近で聞く翔の吐息と、低い声。
それだけで、胸が熱くなる。
智「っ、は、離し…て…っ」
翔「嫌で、泣いてるんじゃ無いでしょう?」
目頭が痛くなったなと思ったら、泣いていたのか。
熱い涙が、俺の頬を伝う。
智「おれは…っ、汚いんだ、よ…」
だから触るな、離せと首を振って抵抗する。
そんな俺の涙を、翔の指がすくう。
翔「こんな綺麗な涙、見た事ありませんよ…」
智「っふ…」
興奮して喚く俺の唇が熱くなる。
翔「大野さん…」
熱い吐息を俺の口内に吹き込んで、翔は俺の脳を痺れさせる。
智「ん、ふ…」
途端に俺は、グッと握り締めていた拳が緩むんだ。
力の抜けた身体は大人しくなり、甘い息が、俺の唇から漏れた。