不透明な男
第14章 終幕
智「んぁ…、あ…」
ベッドにしがみつく俺の背に、翔は吸い付く。
ぎゅっと脇を締め、背中をしならせて俺はその刺激に震えていた。
智「はぁっ、あ」
翔の大きな手が俺の肌を滑る。
湿った手は、俺の肌に吸い付く様に胸を撫でる。
智「あぁ…っ、も、そんなに…」
そんなに愛しそうに触るな。
滑らかに動く掌と、その優しく這う唇が触れるだけで、俺は熱く震えるんだ。
智「っ、く…」
翔「綺麗だよ、智くん…」
恥ずかしい台詞と、俺の名を合わせる。
その声を、翔はわざと俺の耳に寄せて聞かせるんだ。
智「違…、汚い、よ…」
翔に触れられる事に、あんなに抵抗があったのに。
疼いた心は収まるどころか、更に熱くなる。
翔「綺麗だよ…。この滑らかな背中も、貴方の潤んだ瞳も…」
しっかり俺の話を聞けとでも言う様に、翔は俺を仰向けにして瞳を捉えた。
翔「汗も、貴方から聞こえる呼吸も、唇から覗くその紅い舌だって…」
智「翔くん…」
せつなげな瞳をして俺に訴える。
まるで俺が悪いみたいだ。
翔「全部…、全部綺麗だよ」
不思議だな。
翔に言われると、自分が綺麗になった様な気がする。
俺は汚くなんて無いんだ、翔が触れても大丈夫なんだとさえ、思ってしまう。
翔「智くんを、俺に見せて…」
智「んぁ…」
翔の愛撫はしつこい。
丁寧と言った方が聞こえはいいのだろうか。
さっき通った場所を、もう一度丁寧に舌でなぞるんだ。
智「あ、ぁ…」
鼓動が高鳴る。
ドキドキした心臓は熱を持ち、俺の頬まで赤くするんだ。
翔「貴方の声が甘くて、気が狂いそうだよ…」
翔も同じなのか。
俺は既に、おかしくなってるよ。
翔に触れられてこんな声を漏らすなんて。
考えた事も無かったんだ。
智「はぁ…っ、翔、くん」
力の入らない腕を翔に向かって伸ばそうとしたけど、もう動かないんだ。
だから俺は、ベッドに投げ出したままの掌を開いて、指をピクッと震わせるんだ。
翔「智くん…」
智「ん…」
それだけで分かるんだね。
智「んん…、ふ」
そうだよ、キスして欲しかったんだ。
その柔らかい唇で、俺を包んで欲しくなったんだよ。
そして、俺をぎゅっと抱き締めて…