不透明な男
第14章 終幕
瞳を揺らしながら翔を見る。
翔の問いに答える事の出来ない俺の返事を待たずに、翔は指に力を込めた。
智「ん、ぅ…っ」
驚いたのと恥ずかしいのとで、俺は顔を背ける。
背けた顔は、その刺激に反応して眉をピクッとしかめた。
翔「あ…、そっか、ごめんね?」
俺の頬にキスを落とし、翔は指を離す。
カサッと物音がしたと思ったら、翔は滑りを纏った指で俺に触れた。
翔「これで、大丈夫…?」
智「…っ」
その滑りを纏った指が、俺に押し入る。
少しずつだけど、力を込めた指が俺の中に入ってくる。
智「あ、ぁ…」
しかめた眉はそのままに、俺の身体は震える。
翔「辛くない…?」
翔は優しく俺に触れる。
そろそろと、探るように俺の中を撫でるんだ。
智「んんっ、ぅ」
少し大きく反応すると、指の動きを止め、俺の心配をする。
翔「苦しい?大丈夫?」
その声がとても優しくて、閉じた瞼から涙が溢れるんだ。
智「あっ、ぁ…」
翔「大丈夫だから、泣かないで…」
怖くて泣いてるんじゃ無い。
俺の中から、何故だか分からないけど熱いものが込み上げるんだ。
智「っ、な、なんで涙なんて…」
不思議と溢れる涙の理由が分からなかった。
その疑問を翔にぶつけるんだ。
智「なんだか、胸が」
翔「うん」
智「熱いんだ、よ。胸が、熱くなって、苦し…」
その潤んだ瞳で翔を見る。
どうしてなんだ、教えてと、瞳で翔にすがる。
翔「俺と一緒だ」
智「え…?」
翔「俺も、同じだよ。貴方を見てるだけで、貴方の吐息が聞こえるだけで、胸が熱くなるんだ」
智「同じ…?」
翔「もう、苦しくて、おかしくなりそうだよ…」
翔はせつない瞳を俺に見せる。
その瞳が近付くと、俺の舌を翔の中に含みながら言う。
翔「好きだよ」
泣きそうな声で言うんだ。
翔「智くんの事が、好きで堪らないんだよ」
どこまでも愛しそうに俺の舌を絡め、どこまでも優しく俺の中を撫でる。
そんな翔を間近にして、涙なんて止まる訳が無かった。