不透明な男
第14章 終幕
翔は俺の中をゆっくりと動く。
優しく擦り、憂いを含んだ目で俺を見るんだ。
智「あぁ…、はぁっ、あ」
眉をしかませ、恥ずかしいのにどうして、俺は目を逸らせないんだろう。
翔「智くん…」
智「んん…、ぅ」
熱いよ。
俺の全てが、熱くなって疼くんだ。
智「あ、ぁ…っ、く、こ、興奮剤って、一体、何なの…」
どうしてこんなにも熱くなるんだろう。
智「疼いて、仕方が無いんだ…、っ」
跳ねる身体を抑えられないんだ。
翔「智くん…」
智「もう、その声を聞いただけで、駄目なんだよ…」
俺の心臓はどうしちゃったんだろう。
壊れてしまったのか、そう思う程に鼓動は高鳴っている。
智「翔、くんの、声だけで…っ、頭が痺れるんだ」
俺の呼吸を聞いただけで分かるだろう。
俺がどれだけ熱くなっているか。
俺がどれ程に疼いているかなんて、手に取る様に分かるだろう。
智「あぁっ、あ、翔、くん…」
跳ねる身体を、翔は抱き締めるんだ。
抱き締めて、俺を貫く。
優しくて熱いその塊は、どこまでも俺の疼きを誘う。
翔「だから、言ったでしょう」
智「…っ、く、な、何を」
翔「俺と同じだって…」
その瞳に吸い込まれそうだ。
いや、吸い込もうとしているのか。
翔「俺は、貴方のその吐息だけで、もう果ててしまいそうなんだよ…」
智「はぁっ、あ、ぁ…」
翔「胸が疼いて、頭もおかしくなってるんだ」
智「あぁっ、ぁ」
翔「どうしてだか、分かる?」
熱に翻弄される俺に、翔は質問を投げ掛ける。
震える手で翔の腕を掴み、そんなの分からないよと、瞳で訴える。
翔「貴方の事が、好きだからだよ」
あ、まただ。
また、俺の心が震えた。
心臓でもない、頭でもない、俺の中の何かが震えるんだ。
翔「早く気付いてよ」
どうしてそんなにせつない瞳をするんだ。
俺を貫き、安心した様な顔を見せたと思ったら、途端にせつない瞳を浮かばせる。
翔「貴方、俺の事が好きなんでしょう…?」
せつない瞳を細くして、俺の奥を覗こうとするんだ。
翔「好きで好きで、堪らないんでしょう?」
俺の奥を覗きながら、翔は俺に問うんだ。
その瞳に見据えられた俺の心臓は、大きく跳ねた。
本当に壊れてしまったかもしれないな。