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不透明な男

第15章 嘘




夫「やっぱり貴方があの少年だったのね」

智「夫人…」


俺の明るい髪を見て、夫人が笑う。


夫「ふふ、こっちの方が、可愛いわね」

智「色々と、ありがとうございます」

夫「いいのよ。私もいつかあの男の鼻を飽かしてやりたいと思ってたから」

智「だから8年も前の防犯カメラの映像を捨てずに持ってたんですか?」

夫「ふふっ、そうよ?」

B「女って怖えぇ…」


海を捜索してるのは、夫人のカメラの映像のお陰だった。
いくら黒い噂の絶えない男でも、やはり言葉だけでは不十分だったのだが、そこを救ってくれたのが夫人の執念深い性格だったという訳だ。


夫「警察もゴシップ紙も飛び付いたでしょ」

A「ええ、あの男のネタはどこも随分前から狙ってましたから」

夫「そこにこの真実味を帯びたネタだもの。警察だって今度こそ捕まえたい筈よ」

B「今のところ、暴行容疑から始まって薬の売買、脱税、ヤクザとの繋がりまで出ましたから」

夫「あと少しね」

A「遺体は流されてても、車位はあるだろうし…」

B「それなら、車内に残された遺骨だって見つかるかもしれないですしね…」


一点を見つめる俺に、三人の視線が集まる。


智「あ、あぁ…。そうだよね…」


心配そうに見ているのが分かる。


智「おれは、もう大丈夫だよ」

B「成瀬…」

智「こんなにしてもらったんだ。もう、十分だよ」

A「ああ、お前には、聴取しない様にしといてやったから」

智「そんな事出来るの?」

A「お前、俺を誰だと思ってんだ」

智「知らねえよ(笑)」


この際、不問にしてやろう。
まあ少しは分かってるんだけどね。
結構話が長くなりそうだからもういいや。


B「あ、まさかお前、…調べたな?」

智「ふふっ、何を?」

夫「なかなかやるわね」

智「知らないよ、元極道だとか」

A「おま…」


元極道が何故BGかって?
そりゃ調べるだろう。

潜入してた所にあの青年と出会ったもんだから。
しかも、黒い男の側で青年が急に消えたもんだから。

社長の行動を逐一知らせる変わりに、辞めさせてくれ。
大事な奴があの男によって消えたんだと涙ながらに訴える所なんて、コイツららしいと思ったよ。


よく殺されないで辞められたよな。
今でも交流があると言うし。


それも、コイツらの人徳なんだろうな。




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