無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

智「５年前からストーカーしてたじゃん？」

翔「う、うん」

智「その間さ、おれに声掛けなかったの？」

翔「うん」

智「なんで？」


チャンスなんていくらでもあっただろう。
わざわざ作ってやってたのに。


翔「なんか、ドキドキしちゃって…」

智「は？」

翔「勇気が持てなかったんだよね…」


何を遠い目して語ってんだ。


智「ヘタレなんだね」

翔「ヘタ…、じゅ、純情って言って」






純情と言うのかどうかは知らないが、翔は俺に声を掛けなかった。

それからも何度か大学に荷物を運び入れ、すれ違い様に言葉を一言二言交わす、なんて人も出てきたというのに。



智『おれに何か用？』

『あっ、いえその』

智『気のせいだったらごめんね？ なんか、いつも見られてる様な気がして』

『やっ、ヤダ。気付いてたんですか？』

智『ふふ、当たってた。だから、何か用でもあったのかなって』


ほら、今日も来た。
あの視線。


『お仕事、いつ終わるんですか？』

智『あ～、まだこれから色んな所回らなきゃいけないから…。ちょっと分かんないや』


あ、視線がちょっと緩んだ。


『そうですか…』

智『ごめんね？ 』


俺が楽しく話してるとその視線は鋭く尖るし、素っ気ない態度を示すとその視線は緩む。

この視線が翔から出されるものだって、俺は気付いてたよ。

だけどこの時は、まだ理由は分からなかった。



最初はね、偶然かなと思ってたんだ。

大学に行けば、必ずと言っていい程翔を見かけた。

あんな広いキャンパスで、確かに決まった時間に搬入をしていたけれど。

だけどその時間がずれようと、違う曜日に来ようと、いつも翔は居たんだ。


こんな偶然なかなか無いぞと、珍しい事もあるんだなと思ってたんだ。


だけどこれも、偶然なんかじゃ無かったんだろ？



お前が俺に、会いに来てたんだ。