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翔「あ、でも一度だけ。声、掛けられそうなチャンスがあったんだけどさ」

智「一度だけ？」


嘘だろおい。
何度あったと思ってんだ。


翔「俺の大学で、貴方が絡まれてた時」

智「おれ？ 絡まれてたの？」

翔「５年前から見てたの知ってるのに、そこら辺は思い出してないの？」

智「んー、細かい事は分かんないや」


嘘だよ。
知ってる。
だってそれも、俺が仕掛けたんだから。






そのご。
手っ取り早く絡まれる。


智『な、なに？』

『可愛い業者がいるって聞いたからさ』

『君の事でしょ？』


翔は俺を見てる筈だ。
だって今も視線を感じてる。


『君、男にもモテるでしょ？』


相手は二人か。
ちょっと翔には歩が悪いかな。


『君は、そっちじゃないの？』

智『そ、そっちて、何の事…』


早く来いよ。
絡まれてるんだぞ。
こんな華奢な俺を助けなくてどうするんだ。


『俺ん家、すぐそこなんだよね』

『教えてあげるよ？』

智『ちょ…』


ほら、もうヤバいって。
俺の前を触ってるのが見えないのかよ。


翔『そっ、その手を離…』

岡『何やってる！』


ばこーん


岡『大丈夫か？』

智『あ、岡田』


遅い。
遅いぞ翔。


もうちょっとだったのにな。

本当アイツは、ヘタレだな…。



岡『どうした？ ニヤニヤして』

智『や、別に？ …ふふっ』


面白れぇな。

こうなりゃ、アイツから逃げるか。


とことん無視してやる。


話し掛けたいのに、それがどうしても出来ないんだろ？

こっちが仕掛けてやっても全く無駄なんだ。

だったら俺はもう何もしない。

黙って見ててやるよ。


岡『面白い事でもあったのか？』

智『ふふ、ちょっとね』


だけど、お前が話し掛けて来たら相手してやるよ？

悔しいからお前に振り回された事は内緒にしておくけど、でも、お前の相手はしてやる。



だから、俺の気が変わらない内に話し掛けろ。



俺は気分屋なんだからさ。