不透明な男
第15章 嘘
俺の翔に対する過去の話は全部本当だ。
だけど全部只の言い訳なんだ。
翔まで消えちゃったらどうしよう。
俺なんて釣り合う訳無いし。
てか、そもそも俺は男だったな。
なんて、翔を好きにならない言い訳を考えてたんだ。
智「ねえ、聞きたかったんだけどさ」
アパートまでの道すがら、俺は翔に質問をした。
ずっと気になってたんだ。
智「翔くんて、男が好きなの?」
翔「そんなバカな」
鼻で笑いやがった。
智「おれ男なんだけど…」
翔「あっいや、そういう事じゃ無くて」
俺の情けない顔を見た翔が焦る。
翔「男なんて、恋愛の対象にした事無いよ。貴方に会うまでは…」
智「おれと会ってから、男に興味が湧いたの?」
翔「正確に言えば、貴方にだけ興味が湧いたんだよ」
智「おれだけ?」
翔「そう、智くんだけ」
たまにこういうの、ブッ込んで来るんだよな。
ストレートに言われ過ぎて驚くんだよ。
照れる事さえ忘れてしまう。
智「でもさ、女の子とホテル行ってたじゃん?」
これくらいなら言ってもいいだろ。
翔「はっ!?」
智「おれと出会ってからだよ、あれ」
俺にだけ興味が湧いたって言ってたのに、どういう事なのそれと俺は翔の顔を覗いた。
智「可愛かったもんねえ、あの子…」
翔「あっ、あれは」
そうだよ慌てろ。もっと焦れ。
俺がどれだけ心を痛めたと思ってんだこのやろう。
翔「違うんだよ。ホテルには行ったけど、最後までは出来なかったって言うか…」
智「んじゃおっぱいは触ったんだ?」
翔「お、おっぱ…」
智「抱き締めて、キスして、おっぱい触って、それから…?」
意地悪な顔をしてやろうと思ったけど、翔の顔を見れなかった。
俺って結構メンタル弱いんだな。
今知ったわ。
翔「だから貴方に恋をして、不毛だなって…」
智「不毛?」
翔「ずっと熱視線を送ってるのに、貴方は何のリアクションもしないし」
それはお前だろう。
翔「それによく考えたら同性同士だなって」
そんなモン考えなくても分かるだろ。
翔「貴方は男にもモテてたけど、実際の所ソッチなのかどうかも分からなかったし」
ソッチじゃ無かったからね。
翔「だから、思いきって吹っ切ってみようかと」
そんで抱けなかったのか。
ショボい奴だ。