不透明な男
第15章 嘘
本当かそれ?
それにしちゃ、結構スムーズにリードしてたじゃないか。
そもそも抱かれる方はバレても、抱く方なんて分からないだろ。
智「でも、慣れてた様に思えるんだけど…」
翔「そりゃ、勉強したから」
そこも勉強なんだ。
本当翔は真面目だな。
翔「だってね? 考えてもみて?」
智「うん?」
翔「高校は、大学受験の為にそんな暇無かったし」
智「うん」
翔「大学に入ったら入ったで、ペースに付いて行くのに必死でそれどころじゃ無かったし」
智「うん」
翔「漸く慣れてきて、そろそろ大学生活満喫しようかななんて時に、貴方に出会ったんだよ?」
智「ああ…」
だからチャラかったのか。
これから弾けようとしてたんだな。
翔「一目惚れしちゃってさ。もう貴方しか見えないのに、女になんて興味湧く訳無いでしょ」
智「なるほど…」
納得だ。
翔ならあり得る話だ。
智「でも、キス上手いよね」
翔「えっ、そ、そうかな」
智「いや…、やっぱ違うか」
翔「え」
ちょっと喜んだのに肩を落としてしまった。
智「翔くんだから、かな…」
他の奴じゃ駄目なんだ。
智「おれにキスをするのが翔くんだから、だから温かいんだ…」
翔「あったかい?」
智「うん。凄く温かくて、気持ちいい…」
は
おれは何を言ってるんだ。
翔「気持ちいいんだ…?」
うっかり口にしてしまった。
やっべえ、恥ずかしいなと翔の顔を見てみれば、翔はもの凄くデレていた。
智「翔くん、顔」
翔「はっ」
気持ち悪いんですけど。
でも。
俺を想い続けた為に、翔は25歳になるまで誰も抱けなかったんだ。
なんだか少し申し訳無い気もするし、それと同時に不思議と嬉しさが込み上げてくる。
さっきまで翔の細かい話で泣きそうだったのに、なんなら俺は少しニヤけているかもしれない。
智「妄想でもしてたんでしょ。顔ヤバかったよ…」
翔の話が嬉しかったのか、俺は少し伸びをしてた。
かかとを上げ、つま先立ちになると、そっと翔の肩に手を置いたんだ。
智「そんな顔、外でしちゃ駄目だよ…」
無意識に、翔の頬にキスをした。
かする程度に少しだけだけど、凄く愛しく思えて。
翔「え」
目が真ん丸だよ?
翔の挙動不審は、純情から成り立ってたんだな。