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不透明な男

第16章 透明な男



ここは玄関で、靴も履いたままで。

部屋に上がる時間すら勿体無いかの様に互いを貪る。


智「ん、はぁ…」


その事に気付いた俺は恥ずかしくなった。
自分から求める様に、翔の首にしがみつき、舌を絡めていたんだ。


翔「ふふ…、どうしたの?」


我に返った俺は恥ずかしさに堪らなくなって、そのまま翔の肩に顔を埋めた。


智「靴…」

翔「この家、土足じゃないの?」

智「掃除が大変だから、玄関で脱いでるんだよ…」

翔「ふふっ、そっか」


俺を抱き締めたまま、翔は器用に片手で靴を脱ぐ。


翔「可愛いな…」


漏れてる。
思った事をうっかり口にしてしまうんだ。


智「え?」

翔「あっ、いや」


そんで赤くなるんだろ?
あんなキスまでしておきながら、今更どうして赤くなるんだ。


智「はい、これ履いて」


俺もか。
あんなに求めてたくせに、俺だって恥ずかしい。


智「狭いけど、どうぞ…」


俺の部屋に翔がいる。
不思議なその光景に、俺はしばらく見とれていた。


翔「ん? どうしたの?」

智「え? あ、別に」


いいのかな。


翔「食べよっか。俺、もうお腹ペッコペコだよ」

智「ふふ。ペッコペコって」


俺は翔の側にいていいんだろうか。


翔「ここ、置くよ?」

智「うん」


俺が正直になっても、翔は居なくならないのか?

俺の前から消えない?



俺はずっと、その笑顔を見ていられる?






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