無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

俺の神様はしつこい。

しつこい上に、諦めも悪い。
しかもちょっと嘘つきなんだ。




翔「そうだね、きっと神様はいるんだ」

智「たぶんちょっと馬鹿だけどね」

翔「馬鹿？」

智「要領が悪いんだよ」


頭も良くて医者にもなれたのに、やっぱり少し残念なんだ。


智「賢い神様なら５年もかからないでしょ」

翔「ふふっ、確かに」

智「ね、きっとヘタレなんだよ」


神様に向かってヘタレなんて酷いよ、と翔は笑っている。


智「散々遠回りさせるくせに、切れない様に繋がりだけは守るんだから」

翔「俺達の神様は意地悪なんだね？」

智「ん～、て言うか、勇気が無かっただけじゃん？」

翔「勇気？」

智「遠くで見てるんだよ。見てるだけなんだ。絶対に接触しようとしない」

翔「ははっ、ヘタレだ」


お前がね？


翔「じゃあ、神様に勇気があれば、もっと早くに結ばれてたかもしれないんだ？」

智「そうだよ」


散々焦らしやがって。
お陰で俺の気分はコロコロ変わる。


智「そのせいでこんな複雑で面倒で、時間も膨大に掛かっちゃったじゃんか…」

翔「な、なんで睨むの」


つい翔に恨めしい瞳を向けてしまった。


智「いい加減にして欲しいよ全く」

翔「え、神様だよね？ 神様に言ってるんだよね？」


唇を尖らせて睨む俺から少し離れようとする。
だから俺は腕に力を込めた。


智「だけど、色んな偶然を起こしてくれた神様には感謝してるよ」


離れない様にしっかりと腰を引き寄せるんだ。


智「その偶然が創られたものであっても、おれはそれを信じるよ」

翔「智くん…？」


しっかりと翔を見据える。
翔は少し不思議そうな顔をしているけど、目なんてそらしてやらない。


智「運命なんでしょ？」

翔「うん…」

智「だったら、おれはそれを信じる…」


運命なんて無い。

そんなもの俺達の間には無いんだから、翔にはもう会えないと思っていた。


だけど翔はここに居るんだ。


智「運命って凄いんだね…」


偶然を装って創られた運命。

その翔の偽りが無ければ、こうやって抱き合う事なんて無かったかもしれない。


俺達の間に運命を創ったのはお前だ。


無理矢理創られたものだけど、それは信じるべき本当の運命なのかもしれないな。