
不透明な男
第3章 自覚の無い男
なんだか少し翔が怖くて、話題を変えようと俺は話し出す。
智「おれ、退院するよ。」
翔「行く所あるんですか?」
智「うん。松兄ぃの家」
翔「松岡さんの…?」
また少し、空気が張り付いた、そんな気がする。
智「松兄ぃ出張に行くんだよ。だから2、3ヶ月空き家なんだって。」
翔「あ、あぁ、そうでしたか」
智「思い出すには刺激が必要なんでしょ?だから、外に出れば何か思い出すかと思って。」
翔「確かにそうですね…」
翔が俯く。
智「あれ?ひょっとして…寂しいの?」
翔「はっ?」
智「あ~寂しいんだ!」
翔「ばっ!な、何を言ってるんですか!」
智「大丈夫だよ。ちゃんと毎週翔くんに会いに来るから。」
翔「ええっ」
智「…定期検診だよ」
翔「あ…」
あぁ、そうですよねと項垂れながら呟く翔が面白くてたまらなかった。
智「プッ、ほんと翔くんて面白いのな(笑)」
翔「僕で遊ばないで下さい…」
貴方は無邪気すぎるんだ、退院したら心配ですよと情けない顔で俺を見る。
智「心配なの?」
翔「ええ、貴方と言うよりも、貴方の周りの方が、ですけど。」
智「どういう意味だよ(笑)」
翔「そのままの意味ですよ…」
天然はこれだから嫌なんだと翔は溜め息を吐いた。
