不透明な男
第5章 思い出せない男
食べ終わった翔は満足そうにコーヒーを啜りながら俺に聞いてきた。
翔「で、聞きたい事とは何でしょう?」
智「んー、おれって何処で倒れてたんだっけ?」
翔「え…、何故です?」
智「や、なんか手掛かりみたいなの、無いかなぁって」
翔「行くんですか?」
智「行ったら何か思い出すかもしれないし…ね」
翔「…じゃあ、僕も一緒に行きます」
えっいいよ悪いよ、と断る俺に翔は言う。
翔「前に言ったでしょ?僕が一緒に頑張りますって」
と言うと翔は微笑んだ。
智「え、ここ…?」
翔「確かそうですよ…」
智「よく見つけて貰えたな、おれ…」
そこは、今にも崩れるんじゃないかと思える程ボロボロの廃墟が佇んでいた。
その廃墟の敷地内の草木が生い茂っている中で、俺は発見されたのだと言う。
翔「何か…思い出せそうですか?」
智「いや、ここがあまりに衝撃すぎて…」
翔「ですよね…」
なんだか嫌な感じがした。
こんな所でひとり勝手に倒れている筈がない。
何か…何かあったんだ。
思い出さなきゃいけない…何かを。