不透明な男
第5章 思い出せない男
その場をじっと見ていたら気分が悪くなった。
俺は翔に支えられ、翔の車の後部座席に乗せられた。
隣に翔が乗り込んで来る。
翔「大丈夫ですか…?」
智「あ、うん…」
翔「顔が青いな…服を弛めた方がいい。」
翔は俺の服のボタンを外す。
ズボンのベルトも弛めてもらった。
智「ふぅ…」
翔「少しは楽になりましたか?」
智「うん…ありがと…」
まだ少し辛かった俺は、翔に凭れかかると目を閉じた。
俺の手を翔が触る。
翔「指先が冷たいですね。貧血かな…」
俺の手をにぎにぎと握り込む。
翔「舌、見せて下さい。」
俺はペロッと舌を出す。
翔「瞼の裏も…」
俺の虚ろな目に翔の指が近づき、下瞼を捲る。
翔「ちゃんと御飯食べてます?さっきも殆ど食べてなかったでしょ?」
智「ふふ…翔くん、お医者さんみたいだよ…?」
翔「ぼ、僕はお医者さんです!」
智「じ、自分で、お医者さんって…ぷぷっ」
翔「貴方が言ったんでしょっ」
翔はプリプリしながらクンクンと鼻を鳴らした。
翔「あ…御飯も食べないでお酒ばっかり呑んでたんじゃ…」
智「ばっかりじゃ無いよ。ちょっと呑みすぎたかもだけど…」
翔「二日酔いの匂いがしますよ…?」
智「んふ…」
翔「ちょっと?大野さん?」
智「すぴー」
翔「まさか、寝ました…?」
俺は翔の甘い匂いに包まれて眠ってしまった。