不透明な男
第5章 思い出せない男
あれから数日経って、今日は定期検診の日だった。
検診はちょっと白髪のある俺の担当医がやってくれる。
なので特に翔に会うわけでは無いのだが、せっかく来たから挨拶くらいは、と俺は翔を探していた。
脳外科あたりに居るのかなとふらふらと院内をさ迷う。
「あっ大野さん!どうされたんですかあ?」
智「ああ、定期検診だったんですよ」
「その後、お身体は大丈夫でしたかぁ?」
「大野さんが退院されちゃったから、皆寂しかったんですよ~」
智「ええ?そうなんですか(笑)」
「はい。だからまた、顔見せにいらして下さいね♪」
智「ふふ、ありがとうございます。また来ますね」
きゃ~♪と騒ぐ看護師達に俺は囲まれていた。
なんとなく視線を感じてそちらに目をやると、少し離れた所に翔が立っていた。
それでは、と看護師達に笑顔で頭を下げると翔の元へ走り寄った。
智「翔くん♪」
翔「大野さん…。貴方、意外とちゃんと話せるんですね」
智「は?」
翔「そのふにゃふにゃの笑顔であんな話し方されたらそりゃ…」
智「何が言いたいんだよ」
翔「…無意識の人間って怖いな」
智「え?気絶はしてないよ?」
きょとんとする俺を見下ろし翔は溜め息をついた。