不透明な男
第5章 思い出せない男
翔「もう検診は終わったんですか?」
智「うん。後は帰るだけなんだけど、翔くんの顔見とこうと思って探してたんだよ」
翔「あ…そ、それはありがとうございます」
翔は少しピンク色に染まる。
智「なんでお礼なの(笑)」
翔「や、なんとなく…」
じゃあまたね、と帰ろうとした俺を翔は呼び止めた。
翔「今から昼休憩なんですけど、良かったら付き合って貰えませんか?」
智「え?うん、いいよ」
俺は、この間の院内のお洒落なカフェで翔とランチを取る事にした。
智「この間はありがとね」
翔「い、いえいえそれくらい」
智「首、大丈夫だった?」
翔「はい、すぐ治りましたから」
それは良かったと安心する俺を、翔は心配そうに見つめる。
智「なあに?」
翔「夜…ちゃんと寝れてます?」
実はと言うと、あまり眠れていなかった。
広くて暗くて静かすぎる空間は、凄く寂しかった。
なんでバレたんだとドキッとする俺の顔を翔は覗き込んだ。
翔「分かりますよそれくらい。だって隈出来てる…」
智「あ…」
翔は俺の目の下に出来た隈を指でなぞる。
俺は、擽ったくて目を閉じた。
翔「駄目ですよちゃんと寝なきゃ…」
智「う、うん」
翔「何か理由でもあるんですか…?」
翔は、俺の瞳の奥を覗き込んでくる。