不透明な男
第5章 思い出せない男
雅「それで、あれから何か思い出せた?」
智「んー何も」
和「家族とかは?捜索願いとか出てないの?」
智「ない」
雅「独り暮らしとかだったら、こんな事になってるって親も気付かないのかもね…」
智「家族か…」
雅「あ、あっ、あの、仕事とかは!?ずっと休んでんのに連絡とか来なかったの!?」
和「…この人、何も持ってないんだって」
雅「へっ?」
和「せめて携帯だけでも見付かれば何とかなりそうなのに…」
智「うん…」
も~そんな顔しないで、俺達がついてるよと相葉ちゃんが情けない顔をする。
智「んふ、ありがとね」
雅「大ちゃん…」
和「なんでアナタが泣きそうになってんのよ。この相バカが」
雅「相バカって言うな!」
智「…ぷ、くっ、く」
俺が笑うと二人は安心したような顔をして、俺と一緒に笑った。
ああ、ここは居心地がいいな…
ふと、暖かい気持ちになっていた。