不透明な男
第5章 思い出せない男
一瞬帰ってきた松兄ぃのせいで、俺は更に寂しさに襲われていた。
まだちょっと早いけど…出掛けようかな
俺は家を出た。
時間潰しがてら街を散策する。
なんだか知っている様な…知らない様な。
そんなこんなで外はすっかり暗くなっていた。
そろそろいい頃合いかとタクシーを止めて乗り込んだ。
走り出したタクシーの外から声が聞こえた。
◇「…とし!智!」
顔の濃い男がこっちを見ていた。
…ん?
俺を呼んだのか?
さっきの誰だったんだろう?
タクシーを降りて話せば良かったかなと思っているうちに、目的地に辿り着く。
「着きましたよ」
智「ありがと♪」
頬を赤らめる運転手に会釈をするとタクシーを降りた。