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霧島さん

第2章 お久しぶりです、霧島さん




あまりに唐突すぎて、見開いた眼が閉じられない。


馬乗りになった先生の大きな手が喉にごり、と食いこんで、酸素を吸おうとする行為の邪魔をする。



「…ッは…っせ、んせ…ッ!」



緩めてほしいと手を掴むけれど、先生の力は緩まるどころか強まる一方だ。



「ハナ。言ったよな。俺以外会うな、話すなって。そのために扉だって厳重に閉めてんだろ…?どうやって会った」




ぎりっ



本気だ。容赦を知らない先生の手は、本気で私の首を絞めている。




「せ、…ッんせ……ッ」




苦しさで浮かんできた涙のせいで、視界がぼやけてしまう。今先生は私の目の前にいるはずなのに、ゆらゆらと揺れる視界の中では何も見えない。



愛しい彼は今、一体どんな顔をしているの。




「言えよ」



「ッ…ま、ど……ッどつ、ぜ…き、たッ」



「…窓?」



絞り切った声でそう言うと、少し力が緩められた。それでも、まだ酸素は十分に吸えない。



「…さすがに外の空気は吸えるようにって思ってたけど、窓も塞ぐか」



ぼそりと呟かれた言葉に狂気が垣間見える。



先生は、ひどく自分のものに触られるのを嫌う。それは人も同様で。気を付けていたのに、私はまた悪戯に先生を傷つけてしまったのだ。



ああ、視界が揺れる。霞んで、消えてしまいそうだ。




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