霧島さん
第1章 プロローグ
「いや、仲良くさせてくださいじゃないです。どこから入ってきてるんですか」
「ベランダです」
「不法侵入なんですけど」
しかし、その美しさに私は惑わされない。
イケメンだから許される、なんて言葉私には通じない。
そもそも、セキュリティなし、築50年のおんぼろアパートになぜこんなキラキラな男が入居してきた。
しかもよりによって隣に・・・!!
「すみません、挨拶に伺おうとインターホンを鳴らそうとしたら、あまりに扉が厳重に閉ざされてたので開かないんじゃないかと思って…」
爽やかな見た目と反して意外と落ち着いた喋りをするその男は、そう言って申し訳なさそうに笑って小首をかしげた。
あまりに平然と言うから、眼鏡がずるっとずれ落ちるのも構わず呆けてしまう。
…っていかんいかん。
「わざとですよ察してください。誰とも関わりたくないし外にも出たくないからチェーンでぐるぐる巻きにして錠前をかけてるんです」
「あ、そうだったんですね…。すみません、配慮が足りなくて」
「……」
できるだけ剣幕をたてたつもりだったのに、男の返しに拍子抜けする。
なんなんだこの男は、調子が狂う……、