霧島さん
第3章 霧島さんと志月蛍
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AM2時24分
やばいやばい、遅くなってしまった。
足早で歩きながら携帯の時計を確認すると日付はとっくに過ぎていて、焦る気持ちが募る。
けれど雪が降り積もった地面は危うくて、走ることができないのがまどろっこしい。
(ーーーもし、また無理をしていたら)
なんて、気の弱くなるようなことを考えてすぐに取り払った。
街灯の少ない路地を真っ直ぐ行って、右側に見えるボロいアパート。外からでも見えるバキバキの窓を見て自分でもやり過ぎたか、と思いつつ、急いで階段を上がった。
あの窓を大家さんに見せた時の顔はかなり面白かったけれど、窓を突き破った時の霧島さんの顔もなかなかだったなぁ。
トントンッと一段ずつ階段を飛ばしてやっと4階に着く。
そして自分の部屋の鍵を開けてすぐ、俺の体は一瞬固まった。
……真っ暗だ。
「霧島さん…?」
廊下の電気をつけて、ゆっくりと扉を開ける。
「、」
その部屋に、霧島さんの姿はなかった。