霧島さん
第3章 霧島さんと志月蛍
ーーメール…?
音がくぐもっているということは、布団の中にある
のだろうか。
ゆっくりと霧島さんを起こさないように布団を捲ると、小さな体を丸めて眠る彼女が現れた。
その手にはかなり古い携帯が握りしめられていて、チカチカとメールを知らせるランプが光っている。
「すみません霧島さん、携帯お借りしますよ」
と、携帯を取ろうと手を伸ばした刹那、
「ん……先生…ごめ…ごめんなさ、」
「、」
彼女は突然きつく自分を抱きしめはじめ、何度もごめんなさいと苦しそうに呟きだした。
ーーー…まただ。
昨日の朝もこうしてうなされて震えていた。
『いい夢なら見ましたけど』
「…いい夢ねえ……」
キョトンとした顔でそう言っていた彼女を思い出して、少し可哀想だとも思う。
霧島さん、もっと警戒しないとダメですよ。世の中には酷い大人が沢山いるんです。
純粋で綺麗な君を、君の大好きな先生は傷つけている。
そして俺も、霧島さんを傷つける酷い大人のうちの1人なんですから。
ーー俺は震える彼女を抱き上げて、彼女の携帯をポケットにいれた。