霧島さん
第3章 霧島さんと志月蛍
「そんな睨まずに。こうしてると温かいですから」
そう言った志月蛍に抱きしめられて、全身が温かい体温に包まれる。
その体温に包まれて感じるのは、気持ち悪さなどではなかった。
…そうか。やっぱり、そうなんだ。
キュウ、と胸が締め付けられて、熱い何かが目の奥から込み上げる。
「…気持ち…いいです…」
「ね?」
「はい…」
届く声の優しさに、また熱くなる。
「…志月さん。私、気づいたんです」
ごにょ、と言葉を紡ぐ私の声に耳を傾けるように、志月蛍は静かに私を抱きしめるだけで。
そのおかげで、私は落ち着いた気持ちのまま続きを零す。
「先生が好きです。たまらなく好きです。
でも、先生とは少し違う感情を、貴方にも抱いている」
「…」
「掴みきれない貴方が怖いです。でも、喜んで欲しいと思う。そんな姿を想像して、嬉しく思う」
だからこそ、
「貴方に、呆れられたくないとも思う」
「…だから自分の部屋に戻ってたんですか?」
その言葉に静かに頷く。
今ならまだ引き返せると思ったのだ。
そんな考えも虚しく、呆気なく連れ戻されたのだけれど。
「狭くて窮屈だった私の世界に無理矢理割り込んできた、その強引さに私は救われたんです。
寂しい心を埋めてくれる貴方に執着しそうで、たまらなく怖くなった」
引きかけていた熱い熱が、またジワジワと襲う。