霧島さん
第4章 志月さんの秘密
――――――
…が、…舞い上がりすぎて忘れていた。
「…志月さん。なんだかすみません…」
「いえ。もとはと言えば俺が原因ですから」
今朝まで続いた激しい攻めで私の腰が立たないということを。
それに、あまり人の多い場所にはいられないせいで行く所も限られてしまう。
結局、
『部屋にテレビはあっても暇でしょうし、本とか借りませんか?』
という、志月蛍の配慮で静かな図書館兼カフェである場所に連れてきてもらっている。
古本の並ぶ小さな図書館だけれど、その分人も少なくて居心地がいい。
「高いところは俺が取るので言ってください」
「ありがとう…ございます」
ガッシリと腰を支えてもらいながら本棚の前で並ぶこの姿はきっと異様だろう。
しかし、彼の整った顔立ちと高い身長でそんなキザなエスコートも様になっているらしく、通り過ぎる女性は見惚れるだけで終わる。
なんだか、こうして見ると本当にイケメンなんだな…。
「そういえば、霧島さん学校は行ってたんですか?」
「いえ。でも、代わりに先生が教えてくれたり、参考書を解いたりして一般的な教科は一応勉強してます」
「なら、漢字に問題はなさそうですね」
どれにしようか、と真剣に悩むその綺麗な横顔を盗み見る。
…そして、途端に寂しさが襲う。
ーーーきっと先生は、あのアパートから引っ越すことを考えている。
つまり、この人と一緒に居られるのは残り20数日。
それにこの人の部屋に居られるのは窓が直るまでで、実際もっと少ないかもしれない。