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霧島さん

第5章 志月筧




そう言ってベッドの端に座った男が、ふっと笑う。


以前より距離をとった場所に座ってくれたところを見ると、私が怖いと言った言葉を覚えていてくれたらしい。



「あの日の帰り際、ただならぬ様子だったでしょ?大丈夫?」


「っだ、大丈夫です。ご心配なく」


けど、相変わらず人の地雷をどんどん踏んでくる男だ。


そういう要件なら帰ってほしい。


「ふーん。というか、なんかやつれた?ちゃんと食ってんの?」



「…、それもご心配なく」


いつか聞いた事のあるセリフに、思わず一瞬だけ言葉が詰まった。


なんだか、そういうところは似ている…。志月蛍と初めて会った時も、何より先に食の心配をされた。


そんなに私は不健康そうだろうか?


「ま、いいや。
知り合いからよく蛍を外で見かけるって聞いて、もしかして帰ってないんじゃないかな〜って思ってたんだよね。そしたらビンゴ」


「…何が言いたいんですか」


「ん?やだな、そんな怖い顔すんなよ。代わりに世話しに来ただけだって」


「せ、世話?」


「そ、世話」



よいしょ、と言って立ち上がった男を見て体が強張る。


「よっしゃ〜めしめし〜」


…けれど、何故か男は慣れたようにキッチンに向かい、冷蔵庫を漁りだした。


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