霧島さん
第5章 志月筧
「お、流石蛍。材料の宝庫だな」
「あ、あの」
「ん?あ、なんか食べれないのとかある?まあ作るの決まったから拒否権ないけど」
…ないんだ。
って、そうじゃない。私が知りたいのは…、
「し、志月さんは、元気…ですか」
「何、俺がいるのに違う男の心配?」
「、す、すみません?」
ヘラッと冗談まじりでそう言った男は、そう言いつつも気にしていないようで、材料を冷蔵庫から取り出して野菜の袋を開けていく。
意外にもその手つきは慣れていて、無駄のない動きに少し見惚れてしまう。
「というか、なんか随分開き直ったな?もう認めるんだ」
「…あなたに気づかされたんですよ」
「わー俺恋のキューピッドじゃん。お礼は霧島さんでいいよ」
「それで彼は?」
「え?無視?そういうところだけハキハキ喋るね君?」
トントントントン
野菜を切るリズムのようにポンポンと言葉を投げ合う。
志月蛍の兄というインプットか、先日よりは怖いという意識は薄れていた。
「ーーー…正直、俺もあんまり知らない。あいつ、昔からよくわからない男だから」
「……」
「何その使えないなって顔」
「き、気のせいですよ」
正直思ってしまったためギクリとしつつ、慣れない会話を続けたせいで疲れてしまう。