霧島さん
第5章 志月筧
布団にゴロリと寝転がり、料理の音に耳を傾ける。
その音を聞きながらこうして目を瞑ると、志月蛍が居たことを思い出す。
彼も素早い手際で料理を作りながら、他愛もない話をしてくれた。
二日間、それがなかっただけでこんなに寂しいなんて重症だ。
ーー彼は今、少しでも私を思い出してくれているだろうか。
「はい完成〜。ほら椅子に座った座った」
しばらくして、そんな男の言葉でぱちりと目を開ける。
その瞬間、お肉のジューシーな香りが鼻をくすぶって、私のお腹が小さく唸った。
「ハンバーグ…」
「これが嫌いな人間はいないでしょ。霧島さんはもっと肉を食うべき」
「あ、ありがとうございます」
いそいそと椅子に座り、ホクホクの白米とハンバーグ、そして色鮮やかな野菜に喉を鳴らす。
やっぱりこうして料理を目の前にすると、空腹は誤魔化せないな…。
「ご飯は出来立てじゃなくて悪いな」
「いえ。白米…好きなので嬉しいです」
「それなら良かった。俺も前失礼〜」
私のよりも多い量のご飯を並べて、男が目の前に座る。
意外と食べるんだなあ。…そういえば、志月蛍も意外と食べるし、男の人ってそういうものなのかな。
「いただきます」
2人でそう言って、早速ハンバーグを頬張る。
「!」
「美味い?」
…!!美味しい!!コクコクと頷くと、男も嬉しそうに笑って食事を進めた。