霧島さん
第5章 志月筧
腕で顔を隠したハナちゃんが、途切れながらも言葉を続ける。
「志月さんが志月さんなように、筧さんも筧さんなんです…。それなのに、私は貴方を利用してしまった、」
「別に、ハナちゃんが気に病む必要ないよ。俺が好きでしてることだし」
実際、今まで蛍の代わりとして他の女の子も慰めてきたし、
そのまま俺を選んでくれた女の子だっていた。俺を頼ってくるその快感に、俺は執着していると言ってもいい。
けれど…
「自分を捨てないでください、」
「…」
なんで俺、彼女の言葉が嬉しいと思ってるんだろう。
すっかりハナちゃんを抱きたいという熱も引いてしまって、代わりに抱きしめたい衝動に駆られる。
「ごめ、んなさい…」
「…謝らないで」
けど、それは俺の役目じゃないことはわかってる。
「…少し惜しいな」
「え…?」
「なんでもないよ。
…ありがとう、ハナちゃん」
一度ハナちゃんの頭を撫でてから、ベッドの脇に置いていた携帯を手に取る。
これは賭けだ。
正直、本当にあいつのことはわからないからどんな行動を起こすのか全く予想がつかない。
けど、この子の為に少しでも何かしてあげたいと思う。