霧島さん
第6章 霧島さんと先生
カンカンカン!!
と、秘部に手を伸ばそうとした刹那、外から聞こえてきた音にハッとする。
その音はこのアパートの古びた階段を登る音で、足音を聞く限りかなり急いでいるようだ。
「…はぁ…。何してるんだろ私…」
その音で我に返った私は途端に恥ずかしくなって、そのまま膝に顔を埋めた。
カンカンカンカン!!
「…」
それにしても、足音の人結構登ってくるな…。5階建てのアパートでここは4階だけど、上の人かな。
タンッ、タッタッタッ、
「え、」
ーーなんて呑気に考えていたけれど、段々と近づいてくる足音に視線が扉に釘付けになる。
バクバクと鳴り出す心臓。僅かに開いた唇も小さく震える。
「もしかして、」
私は考えるより先に体が動いて、立ち上がっていた。
「もしかして…、
で、でも筧さんが戻ってきたのかもしれない」
そう言ってみたけれど、私の心は期待で満ち溢れていて。自然と体は足早に扉へと向かっていく。
タッタッ…タ、
私が扉の前に立ったと同時に、足音もこの扉の前で止まった。
「ーーーー…」
ハアッと微かに聞こえてきた息切れに、ぶわりと涙が浮かぶ。
ーーーあぁ、彼だ。
紛れもない、私が会いたくて堪らなかった、人だ。