霧島さん
第6章 霧島さんと先生
ガチャリ、鍵が開いてすぐ勢いよく開いた扉。
そして扉を開けた本人も、私が扉の目の前に居たのがわかっていたのか、そのまま直ぐに私を強く抱きしめた。
「ーーーおかえりなさい」
「ただいま」
はぁ、と大きく息を吐いた彼が私の肩に顔を埋める。
冷たく、雪のついた服。冬なのに体からほんのり香る汗に、走ってきてくれたのだと知る。
志月さんだ。本当に、彼がいる。
私を抱きしめてくれてる。
「…ッふ、」
好きだ。と心の中で呟くとさらに溢れる涙。
志月さんはそんな私に気付くと、大きな手を後ろ首に回し、もっと強く抱き締めてくれた。
「志月さん…苦しいです」
「すみません」
そう謝ったのに、志月さんは力を緩めない。
「1人にして、突き放して、すみません」
「ーーー、本当ですよ。何やってるんですか…」
「ごめんね」
彼の少し癖のある後ろ髪。その髪を少し掻き分けるとある小さなホクロ。高く筋の通った鼻。涼しげで、奥二重気味の瞳。全部、本物だ。
「俺、話さなくちゃいけないことがあるんです」
目を瞑って彼の温もりを久し振りに感じていると、志月さんが少しだけ離れて私を見つめた。
その瞳は真剣で、思わずごくっと生唾を飲み込んだ。
「聞いてくれますか?」
「当たり前です。教えてください。志月さんの全部」
もっと知りたい。きっと私は、どんな志月さんでも受け入れられる。
たとえ自分が傷つくことでも、聞く覚悟はできてるからーー…。